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​作品紹介

原作はギリシア喜劇の代表作で、女たちが“とある方法”で戦を終わらせるために蜂起する物語。
本公演では物語の舞台をギリシアから日本の戦国時代に移して上演いたします。 
単なる喜劇ではなく、女性の社会的地位に関する問題をはじめ、差別や格差、終わらない紛争など
過去と現在に共通するテーマも扱っています。
いま、この時代だからこそ、この戯曲が伝えるメッセージは力強いのではないでしょうか。 
歌あり、踊りあり、笑いあり、野外ならではのド派手な演出もある、
玉川オリジナルバージョンの『女の平和』、ぜひお楽しみください。

​あらすじ

ときは戦国、乱世の時代。 

ときは戦国、乱世の時代。 
依然として終わりを見せない戦。
残された女たちは生きているのかわからない夫や息子を待ちながら、ただ年老いていくのみ。 
そんな中、虎姫は戦に振り回される各国の女たちを集め、ある誓いを立てる。 
女たちは戦を止めることができるのか。ある誓いの内容とは一体? 
平和のために戦った結末はいかに。

​相関図

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​原作

本公演の原作となっている『リュシストラテ』(邦訳『女の平和』)は、古代ギリシア喜劇を代表する詩人アリストファネスによる作品。紀元前411年のレナイア祭で初演が行われたとされている。
当時のギリシアはペロポネソス戦争の真っただ中であり、この戦争をパロディ化した反戦劇と捉えることができる。
原題の「リュシストラテ」はタイトルロールの名前で、解体を意味する「リューシス」と軍隊を意味する「ストラトス」の合成語であり、戦争を終わらせる女という意味が込められている。

​演出家コメント​

窮鼠猫を噛む光景

 創作に関してなぜこの作品を選んだのか、と繰り返し聞かれるのでそういう文章を期待した方もいらっしゃると思いますが、『女の平和』がエロい社会風刺劇で、学科の学生は女性が圧倒的多数だから選びました。舞踊的要素もしっかり入れて野外でド派手に疫病退散を込めて上演したい。経緯に関する話題はこの三行でおしまいです。そんなことよりもっと演劇的な話がしたい。

 少し『女の平和』らしい話題から始めると、3月末、世界経済フォーラム(WEF)は各国のジェンダー不平等状況を分析した「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2021」を発表し、2021年版の「ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)」を公表した。対象となる世界153カ国の中で日本は120位である。SDGsやジェンダーフリーが叫ばれる中、さらに夫婦別姓についての旧態依然とした判決がなされた。コロナ禍で人類の祭典オリンピックを開催しようとしている国が、この状況であることに愕然とする。建前とホンネだとしても国家としての理念と論理が明らかに破綻している。その破綻を糾弾されると為政者たちは権力を駆使して糾弾者を破滅させようとする。我が国の政治は全てこのメカニズムの中で成り立ってしまっている。耳あたりの良い「事実」だけが「真実」を駆逐する。

 今回の舞台のキーワードの一つは「破綻」である。その混沌が生み出すのは不安や怒りで、他者を異物とみなし攻撃することで一体感と安心感を得ようとする行動につながる。

 一方で追い詰められた者が引き起こす奇想天外な行動がこの舞台の喜劇の原動力だ。ネコとネズミのバトルを描いた「トムとジェリー」は、窮鼠猫を噛む情景が突拍子もないから面白いのだが、いくら頭が良いとはいえ当事者であるネズミのジェリーにとっては命懸けである。笑っている場合ではない。笑いの起源には常に不安や怒りがあるが、関係のない者にとっては残酷にも突拍子のない滑稽な行動に映る。この舞台でジェリーは女たちであり、男はネコのトムである。破綻が引き起こした無秩序は不安と怒りが増大するにつれ制御不能になっていく。

 ではどうすれば秩序は取り戻せるのか。誰が正しく、誰が間違っているのか。安心するために群衆が一体感を生むために用いる重要なツールが、もう一つのキーワードである「扇動(アジテーション)」である。どれだけアジテーションして自分の意見を正当化し、周囲を味方につけるか。これが今回の俳優たちに課せられた使命である。76人もの大所帯の中で自分の意見を主張するのは並大抵のエネルギーではない。演者たちは役の人物としても現代を生きる一人の若者としても壇上に立ち、一人でも多くの味方をつけ、観客をも巻き込んで「論破するか」に挑まなければならない。さらに観客にはそれがデマであるかを見抜くためにはどんな知恵が必要か。真っ向真剣勝負だ。笑って欲しいけど、笑っている場合ではない。

​構成・演出 多和田真太良

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